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2021.06.02

眼窩骨折手術について

今日もよろしくお願いします。   先日月島もんじゃを食べさせていただきました。小さい頃からお好み焼きは好きでしたが、あれは本当に素晴らしい食べ物です。 食べる前のもんじゃのイメージって「ほぼ液状のゲチャゲチャしたよくわからないもの」でした。 本当にすいません。あれすごーーーく美味しいです。しかも作る過程がエンターテインメントです。   具材の上にお出汁の効いた生地がヒタヒタに入っており、まずは具材だけを鉄板の上に出してしっかり炒めます。 そのあとにドーナツ状の土手を作成し、その中にお出汁を入れます。 この時に土手が崩れてお出汁が流れ広がると「あー!!下手くそ!!」となります。あのワクワクがいいですね。 そしてそのお出汁と具材を混ぜて炒めます。 それをうすーく伸ばしておこげを作って小さいヘラで剥がしてこそぎ取ってハフハフと頂くという流れです。   何より香りが最高なのとお出汁の味がしっかりついた「おこげ」が絶品でございます。 できたら一人ではなくグループで鉄板を共有しワイワイ食べるとよいです。美味しさが倍増です! 一度ご賞味ください。       さて今回は眼窩骨折手術についてです。 眼窩下壁骨折手術を執刀させて頂きました。偉そうに執刀と言っても触り程度ですが…。 眼瞼に引き続いてorbitaにも執刀の機会が出てきて嬉しい限りです。関わった方々には感謝感謝です。 骨折についてはまったく教科書がないです。色々な発表資料や解剖、オペ動画をたくさん見て、執刀し怒られながらやらないと覚えられないなと痛感しました。現時点でポイントだなと思ったことを列挙します。   まずアプローチについてですが、当院では経結膜アプローチで行なっております。 Lynch切開、Subciliary切開、外眥切開などの皮膚切開アプローチもあります。色々な考えがあっていいと思いますが、多かれ少なかれ瘢痕が残り、かつ縫合に時間が取られるため当院では行っておりません。   眼窩内にしっかり麻酔をした上で下眼瞼結膜とLERを切離し、牽引糸をかけます。     その後助手に筋鉤で下眼瞼を牽引してもらい、眼窩の下方rimを露出しています。 この時に第1関門です。orbita内に入らないこと、眼輪筋に切り込まないことです。 下眼瞼を牽引されている状態だと頭の中の解剖3D構造があまり役に立たなくなるのでひどい場合は容易に皮膚に穿破します。 めちゃくちゃ恥です。常に常に眼輪筋を切り込まないように注意です。   眼窩下縁を出すまでは不用意にスプリング剪刀で切り込まず、愛護的に下縁に到達します。 その後形成剪刀にて眼窩隔膜と結合組織をrimの少し下方で切開をいれて骨膜を露出させます。 骨膜が露出できたらrimに15番メスで切開を入れて骨膜剥離子で下壁の骨膜下に入っていきます。 骨に対して骨膜剥離子が直角になるように用い剥離を進めます。 内側、外側からもアプローチします。特に内側には涙囊や下斜筋付着部がありますが、しっかり骨膜下で剥離できていれば怖がらずに剥離を進められます。止血の役割+眼窩脂肪を寄せておく役割を期待して、ボスミンベンシーツを用います。   そして骨折部位の全域を明らかにします。 そして上顎洞落ち込んだ組織を引き戻します。見てわかると思いますがめちゃくちゃ視野が悪いので顕微鏡を色々な角度に動かして行います。   最後にスーパーフィクソーブを眼窩形状に合わせて切り抜き、骨折部位に挿入します。 入れただけだと脂肪が嵌頓していることがあるためFoced duction(直筋を把持してグイングイン眼球を回すこと)にて眼窩脂肪を自然な位置に戻しておきます。その後ケナコルトを眼窩内に撒きます。   結膜は無縫合で終了です。     手術の工程は以上です。何やらさも自分が完刀したかのように話していますが、鹿嶋先生の横でふむふむと聞いていたことをまとめただけです。すいません。機会をいただける限り早い内に完刀を目指します!   今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.05.26

涙囊鼻腔吻合術について

今日もよろしくお願いします!   生まれて29年間ずーーーーっとダイエット中の菊地です。ダイエット歴が29年続きそろそろベテランと呼べるところまで来たかと思います。周りを見て29年間ダイエットを続けている人がいるでしょうか?いやいないと思います。 ダイエットなんて簡単ですよ。僕は何回もやってます。 僕は相当努力家だと思います。 ちなみに今日は焼肉を頬張りました。冷麺と石焼チーズビビンバも追加しました。 ダイエット歴が30年になりそうです。またダイエットベテランに一歩近づきました。引き続き頑張ります。   涙囊鼻腔吻合術について さて本日は涙囊鼻腔吻合術鼻内法についてです。 眼科医になったときはよもや骨を削ることとは思わなかったです。   よもやよもや。柱として不甲斐なし。   言いたかっただけです。   涙囊鼻腔吻合術(以下DCR)。そもそも見たこともない先生方も多いのではないでしょうか? 僕は亀田総合病院で研修してて名前も知らなかったです…。お恥ずかしい。   流涙の治療と言うと思い浮かぶのはチューブ挿入かと思います。 涙道閉塞であれば内視鏡で閉塞部位を穿破すれば開通が得られます。その場合はチューブを留置すると改善が得られます。   チューブ挿入されている先生方ならわかると思いますが、チューブで治る人ってそんなに多くないの気がします。 一度治ってもすぐに再発したり、そもそもチューブ挿入していても流涙が続いていたりと結構難渋することが多いです。 そういう症例って結構鼻涙管が狭くなっていることが多いです。 閉塞と違い、狭窄の場合はチューブではほとんど改善しないです。   そんなときのDCRです。 鼻腔と涙囊を直接吻合させるため手術成績は90%以上と言われています。   成功率の高い手術でいいじゃん!と思いますが、成功率の高い手術ほど再発すると極めて悔しいです。 ポイントは大きく二つあるかと思います。   1つ目は骨窓の大きさです。 当然ですが、小さい骨窓だと再閉塞してしまうためある程度の大きさが必要です。 大きさについて決まった指標はないですが、上縁は内総涙点の高さまで骨窓を拡大すると再発率が低下します。 (まだまだちっちゃい骨窓しか作れなくて奮闘の日々です…!)   2つ目の涙囊切開の仕方です。 骨窓作成後に涙囊を切開しますが、涙囊内腔を観音開きに展開すること(marsupialization)が大事です。鼻内法でも鼻外法でもこの手技をしっかり行うことが再発率の低減につながります。当院ではそれに加えて最後にボルヒールを散布して、さらに観音開き状態で固定させる手技を追加しております。   細かいポイントは他にもありますが、上記を忠実に行えば再発率の低減に大きく寄与できると思います。   術後は鼻出血が怖いです。高齢と涙嚢炎の既往があれば術後鼻出血の遷延のリスクが上がると言われています。   抗血栓薬の中止の可否についてですが、当院では必ずしも中止を行なっておりません。   Wendy Smith, Christos Merkonidis, Mark Draper, Matthew Yung: Endoscopic dacryocystorhinostomy in warfarinized patients. Am J Otolaryngol. 2006;27(5):327-9. Wendy Smith, Christos Merkonidis, Matthew Yung: Endoscopic dacryocystorhinostomy in patients with taking aspirin perioperatively. Am J Otolaryngol. 2006;27(5):323-6.   鵜呑みはいけませんが上記の論文によると、バイアスピリン、ワーファリン使用患者において必ずしも抗血栓薬の中止は必要ないのかもしれません。実際当院でも重篤な鼻出血はほぼ起きていません。ご参考にしていただけたら幸いです。   今日は以上にします。ステイホームですが、皆さん油断せずスリムアップに努めましょう。 今日もありがとうございました!   関連記事

2021.05.17

再手術について

さて今日は再手術についてです。 白内障手術と違い、眼形成手術には少なからず再手術が必要です。悲しいですが…。CCCの大きさや強角膜創の長さは術直後と術後1週間でほぼ変化することはないですが、眼瞼は術直後に「ビシッと決まったなこれは」と思っても手術2週間後に見てみると様相が変わっていることがあります。思ったより左右差が出ていたり、低矯正・過矯正があります。悲しいですが…。   先日再手術を執刀させて頂いたのでご報告致します。   術後修正はいつまでに行えばいいのでしょうか?? たまに「半年様子を見てみましょう。」という意見を聞きますが、半年待って何か改善するならそれでもいいんですけど術後早期の時点で微妙な仕上がりだと経過見ても大体微妙な仕上がりです。しかも微妙な仕上がりを患者様に半年待っていただくのも気持ち悪くて嫌です。   創傷治癒的に術後6時間〜7日目が炎症期、7日目〜3週間までが増殖期、3週間以降が成熟期と言われます。 炎症期はいわゆるめっちゃ赤くなって腫れる時期です。この時期はクーリング、圧迫が大事です。 増殖期は肉芽組織が形成され、創が収縮し始めます。線維芽細胞、血管内皮細胞の遊走、増殖が促進されます。 成熟期は瘢痕化が進み、創強度が増します。   創部が成熟期に入ると、完全に瘢痕化が始まってしまうため再手術は術後2, 3週以内が望ましいと思われます。その時点で再手術すると切開を加えずとも把持+牽引だけで前回のlayerで創を離開できます。変な力を加えず必ず前回のlayerで創を展開します。そうすれば自ずと前回の固定糸が出てきます。   前回手術時の固定糸の位置を目で覚えて過矯正であれば前転量を少なく、低矯正であれば前転量を増やして固定し直します。過矯正時に前転量を少なくするのは簡単ですが、低矯正時に前転量を増やしても低矯正が残存する場合が大変です。   apoの近位部に固定し直しても低矯正が残存する場合、2つ対策があります。   1つ目はMuller tuckingの併用です。aponeurosisをどれだけ短縮しても良好な開瞼を得られない場合、下垂の主因がaponeurosisではなくMullerにあると考えます。実際今回の症例はtuckingの併用で良好な開瞼が得られました。下垂の主因がaponeurosisかMullerにあるかを術前に判断するのは非常に困難です。術中の定量、術後経過観察にて判断しましょう。   2つ目は瞼板の固定位置を変えることです。やや愚策ですが…。普通であれば瞼板の上縁付近に固定しますが、どうしても開瞼が得られない場合の救済策として瞼板の上縁より下方に固定します。あまりにも下縁付近だと歪になるので注意です!     当院だと再手術を外来の合間にぱぱっと行わなければならないのでスピードを更に上げないとついていけないです!! まだまだ頑張ります!今日が人生で一番若い日です!今日もありがとうございました! 関連記事

2021.05.07

高齢者の眼瞼下垂について

今日もよろしくお願いします。   現在臨床眼科学会に向けて抄録を作成中です。締め切りは5/12正午までです!内容は先天性睫毛内反におけるHotz変法とlid margin splittingの併用の手術成績についてです。既報を調べてみると案外発表歴があんまりないようですので眼形成の歴史の進歩に寄与できれば嬉しい限りだと思います。   今まで専門を決めていなかったときは「学会発表、論文作成なんて必要ないでしょ」「お金と時間をかけて得られるものは名誉だけじゃないの?」「別に給料が増えるわけじゃないし、誰に褒められるわけでもないし」「上司に直していただく時間も申し訳ない」などと否定的な考え方でした。   しかし、専門が決まると「自分のやっていることが正しいのか」「正しいと思ってやっていたことが実は時代遅れなのではないか」「手術成績がいいのであればそれを医学会に広めるべきではないのか」「自己完結型の医療だと自分も自分以外も成長しないのではないか」「常に患者様にアップデートした医療を提供すべきではないか」「自分を育てていただいた環境にあらゆる形で恩返ししたい」などと色々考えるようになりました。かなり考え方が深まったように感じます。こういう考え方になると人生がポジティブフィードバック状態になります。眼形成で専門を突き詰めれば突き詰めるほど自分も職場の人間も患者様もみーーんなハッピーになれるなーーーと最近心から思ってます。こんな考え方に到れたのも多くの方にご指導いただいたおかげです。   「イノチノオンジンカンシャエイエンニ」 「感謝するぜ お前と出会えた これまでの 全てに」   です。(元ネタわからない人は調べてみてください。)   高齢者の眼瞼下垂について さて、本日は高齢者の眼瞼下垂についてまとめます。   当院は銀座にあるため比較的若年の患者がいらっしゃいます。正直若年の方の手術は極めてやりやすいです。 肌に張りがあって切りやすいし、萎縮や脂肪変性がなく解剖がわかりやすいし、手術結果が出しやすいです。   僕の働いている亀田総合病院では若い人はあまりこないです。実際どこの病院でも受診されるのは高齢者が多いところがほとんどだと思います。しかし高齢者では手術が困難になることが多いです。   眼球運動が全体的におぼつかず、術前の挙筋機能測定が難しい。 皮膚が薄くて張りがないためすぐにちぎれてしまう。 皮膚弛緩が強いため皮膚切除量が多くなる。 aponeurosisが萎縮し、ペラペラになっておりすぐに穴が空いてしまう。 ミュラーが脂肪変性しており、組織間の同定が難しい。 術後挙筋を短縮しすぎるとすぐにドライアイが起きる。 DM、抗血栓薬内服、腎機能障害など様々な理由で周術期管理が難しい。 緑内障点眼をしている人、レクトミー後のblebがある人、ベル現象が麻痺している人などは上げ過ぎ注意。   など困難な理由がたくさんあります。   実際自分もaponeurosisの同定が困難でモチョモチョしている内にaponeurosisをグズグズにしてしまった経験があります。 鹿嶋先生ごめんなさいです。   あとはまぶたが下がり過ぎて吊り上げか挙筋短縮のどちらがいいのか判断に迷う時が少なからずあると思います。 眉毛の位置に注目です。先天下垂で吊り上げを要する方は瞼縁〜眉毛間距離が他の方と比じゃないです。 また、「お若い頃にもほぼ今と変わらない目つきでしたか?それともパッチリ目でしたか?」と聞いてみるのも鑑別診断に有用です。若年時から下垂があったのであれば先天下垂の要素が強くあるため吊り上げ適応があると思われます。逆に若年時は比較的パッチリ目だったのであれば挙筋機能が一見低下していても挙筋短縮術をトライしてみてよいと思います。   いずれにせよ高齢者ほど術前診断、解剖の同定、切開、縫合手技を確実に丁寧に行う必要がありますのでご留意を。   さて最後に今日の手術の反省点を挙げます。 挙筋短縮術の時に眼窩脂肪がもりもりの人がいました。 僕の思考回路は「お!眼窩脂肪じゃん!今の俺なら余裕で切除できるぜ!」でした。 そして眼窩部に麻酔をかけて脂肪を切除しました…。   皆様、下垂オペの術中に眼窩部に麻酔を追加するときは必ず短縮の矯正量を確定した 後!! にしましょう。当然ですよね… でないとlevator complexに麻酔が効いてしまい、術中定量ができなくなります。 (結果だいたいの前転量で手術終了となりました…) 自分の手数が増えてきたことで欲が出ました。恥ずかしい限りです。   今後も欲を出さずに頑張ります!今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.05.04

眼瞼下垂手術の適応・術式選択について

今日もよろしくお願いします。   最近筋トレ・減量にハマっているのでラーメンは食べておりません。すいません。 もっぱら「緑の濃い野菜」「玄米」「質のいい油」「タンパク質」「大量の水分」「食物繊維」「ヨーグルト」ばかり食べています。ジャンクなものを食べる日も設けていますが、上記の食事の方が明日に繋がります。当院は医師もスタッフも患者も美的に優れている方が多いので自分も追いつけるように頑張ります。   昨日今更ですが、「The Greatest Showman」観ました。最高ですねあの映画。 興行師である主人公が奇怪なルックスのスタッフを集めて博物館やサーカスを始めます。当時は「いかがわしい」「低俗だ」などと言われ卑下されていましたが、終盤になると家族や仲間・世間に認められていき、本当の成功・幸福を手にするというストーリーです。序盤に新聞でショーを酷評されるシーンがあるのですが、それを逆手に取り「新聞を持参した人は入場料を半額にします」と広告を出すというの皮肉な対応策が個人的に滑稽でした。人間常になんらかの逆境に晒されていると思いますが、荒波を悠々自適に乗り越えるメンタルを教わりました。まだまだ若造ですが、逆境をどこか楽しむように笑顔で乗り越えます。(診療中ニヤニヤしがちなので気をつけます。)     眼瞼下垂について さて今日は眼瞼下垂についてです。 当院では下垂手術に対してblepharoplasty、aponeurosis(一部ミュラー)による挙筋前転術、吊り上げ術(ナイロン糸、ゴアテテックス)、眉毛下皮膚切除などを施行しております。   まだまだ適応範囲についてはわかっていない部分も多いですが、まず「下垂があるのかな??」と思った時には上方視時に瞼縁の下垂があるがどうかを診るべきと教わっております。正面視のMRD-1の評価だけだと皮膚弛緩なのか、levator complexの下垂なのかがよくわからないです。   上方視した時に瞼縁が上がっており皮膚だけが弛緩している場合は、levator complexの短縮は不要でBlepharoplastyや眉毛下皮膚切除が適応になります。 上方視した時に瞼縁が下がっている、もしくは左右差がある場合は、aponeurosisによる挙筋前転術、もしくは吊り上げ術が適応になります。   Blepharoplastyと眉毛下皮膚切除の選択の仕方は、皮膚弛緩のある範囲が上眼瞼全域であればBlepharoplasty、範囲が上眼瞼の頂点より外側であれば眉毛下皮膚切除を選択します。加えて、眉毛下皮膚切除は極力重瞼がある人に勧められます。重瞼がない人はBlepharoplastyを行っておいた方が無難かと思われます。   挙筋前転術と吊り上げ術の選択の仕方は、挙筋機能が保たれていれば挙筋前転術、保たれていなければ吊り上げ術を選択しています。判断に悩んだ時はとりあえず挙筋前転術からトライしてダメだったら吊り上げをしましょう、としっかりムンテラしておけば問題ないかと思います。そのため術前の挙筋機能検査は必須を言えると思います。(最初はよく測定を忘れて注意をしていただきました。)   挙筋前転術はaponeurosisのみ前転するか、ミュラーも含めて前転するかは術中の上眼瞼の上がり具合で決めます。aponeurosisの短縮のみでどうしても上がらなければ、ミュラーと結膜を剥離してapoとミュラーの両方を短縮します。ミュラーは支配神経が違いますので剥離する前に必ずミュラーに麻酔をかけましょう。患者様に痛い思いをさせるのはお互いにとって不利益です。ミュラー剥離時は動脈弓に注意して鈍的剥離をします。結膜は硬い組織なので感触で切り分けると良いです。また、ミュラーの血管は横、結膜の血管は縦に走っているためそこでも見分けられます。結膜に穴が開いたとしても縫合は不要です。最後に5-0シルクでマットレス縫合して前転を行います。     眼形成手術は手術の美しさ・速さも大事ですが、それよりも診断が一番重要だと思います。 今日もありがとうございました。 関連記事

2021.04.28

手強い下眼瞼内反

今日もよろしくお願いします。   自分は東村アキコという漫画家が大好きです。ギャグ表現が多いのですが端々に散りばめられた表現や描写がストレスの多い現代人の心の琴線に直に触れてくるような作品ばかりです。一番有名なのは「東京タラレバ娘」でしょうか?他に「かくかくしかじか」「主に泣いています」「美食探偵 明智五郎」「ママはテンパリスト」などがあり、ほぼ全て非常によくできてます。   今は「雪花の虎」という漫画を読んでおります。上杉謙信が女性だったのではないか?という俗説があり、それを題材にした作品が過去に多く出版・放送されています。その中に「六韜三略」という兵法書が出てくるシーンがあります。そこに記されている「十過」は、将たる者にふさわしくない十の「過ち」を挙げたもののようです。現代のリーダーにも通ずるものがあると思ったので供覧します。何かの糧にしていただければ幸いです。 勇にはやって死を軽んずるもの 短気でせっかちなもの 欲が深くて利益を好むもの 仁がありすぎて厳しさに欠けるもの 智はあるけれど臆病なもの どんな相手も軽々しく信用するもの 清廉であって人にもそれを要求するもの 智がありすぎて決断できないもの 意思が強くなんでも自分で処理するもの 意思が弱くなんでも人任せにするもの       さて本日は下眼瞼内反についてです。まず下眼瞼内反と外反正直難しいです。上眼瞼の疾患よりも病態、治療法がやや理解しづらい部分が多いです。下眼瞼内反について今現時点で教わった点・考えた点についてまとめます。   まず眼瞼内反の病態ですが、なんらかの理由によって前葉と後葉のバランスが崩れることが原因です。前葉の水平方向の弛緩と後葉の垂直方向の弛緩が起こることにより眼輪筋隔膜前部の瞼板の上に乗り上げる「overriding現象」を生じ眼瞼が眼球側に内回転することにより発症します。大半は退行性が原因ですが、一部にある瘢痕性を見逃さず手術方法を選択する必要があります。   退行性・瘢痕性の場合見分ける方法としては触診が一番いいと思います。前葉に水平方向の弛緩であればSnap back test, Pinch test, Lateral distraction test, Medical distraction testなど色々なテストがあります。後葉の垂直方向の弛緩については瞬目テストが有効と言われています。   他に教科書には書いてないですが、下眼瞼をpush upするときに容易に内回転で起こればが後葉の拘縮があるということを示しています。   これらの見分け方は外反の病態判断にも使用でき、術式選択に非常に有効です。     次に術式選択ですが、これまた難しい。Jones原法、Jones変法、Wheeler-Hisatomi法、Lateral tarsal strip法、埋没法があります。   当院では主に前葉後葉ともに拘縮のない眼瞼内反にはLER plicationを施行しております。 何それ??って思った方(僕もでした…)は鹿嶋先生がyoutubeに動画をアップしていただいているので見てみてください。 おそらくまだ再発率について論文化しておりません(申し訳ありません…。近い未来論文化します。)が、簡単な手技の割にかなり再発率が低いです。お試しいただけたら幸いです。   水平方向の弛緩が強い場合にはLateral tarsal strip法を行っております。 後葉の拘縮がある場合にはLER切離+Hotzを行なっています。 いずれもまだ執刀経験がありません…まだまだハードル高いっす… 他にも色々な術式の使い分けがあるのでしょうが、まだわかっていない部分が多いので今後答えに近づけるように頑張ります。     また執刀機会がありましたら、ポイントについてまとめてご報告したいと思います。 今日もありがとうございました! 関連記事

2021.04.20

切開デザインについて

今日もよろしくお願いします。   日曜日は久しぶりの休みでしたので千葉県を代表する有名店「松戸富田製麺」に行ってまいりました。自分は海外旅行の際に羽田空港出発の場合は「六厘舎」、成田空港出発の場合は「中華そばとみ田」を食べてから日本を発つと決めております。久しく食してませんでしたが、全く異常なしでした。完成度が極めて高いです。ラーメンっていうとどうしてもジャンクフードのイメージがいまだに強いと思いますが、あのスープは芸術です。魚粉の香りが特徴的な濃厚豚骨魚介スープです。ペットボトルに入れて持ち歩きたいくらいです。しかし、濃厚スープだけだと舌に残る感じがあります。そこでほんの少しゆずが入っているんです!!ゆずによって清涼感が加わり全体の完成度が飛躍的に上がります。よくゆずを入れてくださったなぁ……!と感謝さえ覚えます。麺には他では食べられない深い小麦粉の味わいがあります。まずは数本スープにつけずに召し上がるのが通の食べ方のようです。   ぜひ一度来訪をお願いします。   今回は皮膚デザインについてです。   挙筋短縮、Blepharoplasty、眉毛下皮膚切除などはデザインが命です。 大きく外さなくはなってきましたが、いまだに皮膚デザインは難しいです。瞼の形は人によって千差万別ですので白内障のCCCと違い、執刀するたびに考えさせられます。   挙筋短縮、Blepharoplastyにおいてデザインの下縁において必ず「睫毛上5mm」は外してはいけないと教わっております。短すぎるとpretarsal showがほぼなくなり余剰皮膚が弛緩として瞼縁を乗り越え重みの原因となります。長すぎると瞼縁から重瞼線までの皮膚がたるみ、不自然な重瞼となります。   上縁については皮膚を押し下げてできた複数のシワの一番上のシワに剃ってデザインすれば術後の皮膚弛緩の残存を予防できます。   内側については内眼角の直上までつなげますが、しっかり内側まで重瞼を作ってあげないと中途半端な重瞼になるなぁと経験的に思いました。   外側については余剰皮膚があるところまで切除します。鹿嶋先生は一つの目安として外眼角から外側に15-20mm程度まで切除すると良いと仰ってました。       眉毛下皮膚切除においてのデザインの上縁は「眉毛の一番下の生え際のライン」ではなく!!、「メイクラインの下縁」です。生え際のラインで切開すると瘢痕がとても目立つようになります。女性だとメイクラインがわかりやすいですが、眉毛の濃い男性だとメイクラインがわかりづらいので注意が必要です。   下縁は皮膚弛緩がなくなるところです。最低でも縦径が10mm以上切らないと皮膚弛緩が残存するようです。皮膚の切りすぎもよくないですが、10mm以上切ると本当に術後スッキリした瞼になると思います。   内側は眉頭を超えると瘢痕が目立ちます。眉頭より外側にデザインの内側端を作ります。   外側は目尻の皮膚のたるみがあるところまでです。   眉毛下デザインでは一番縦径が幅広になるところが外眥の直上になります。   以上を守ればクミンシード型?(他にいい例えが思いつきませんでした。)の良いデザインができます。       デザイン時の注意ですが、ふっとい線で書くといざ切開する時に線の上縁、真ん中らへん、下縁のどこで切開するのかわからなくなってしまうので細い線で書くことをお勧めします。細かいことですが、実際結構切開線を見失います。   また左右差が大きくならないように色々な角度から自分の書いたデザインを見て面積や形に左右差がないか確認するとよいです。       今日は以上です!ありがとうございました。 関連記事

2021.04.11

はじめてのつりあげ

今日もよろしくお願いいたします。 昨日はライブサージャリーがありました。お忙しい中御視聴いただいた先生方ありがとうございました。 先生方の肥やしに少しでもなれば鹿嶋先生もあくせく準備した職員もみんなハッピーです。 気づいた方もいらっしゃったかもしれませんが、完全油断していた僕と鹿嶋先生の目が合い、「縫合やってもらおうかな❤️」とお言葉を頂戴致しました。自分の所属する亀田総合病院の社訓が「always say yes」であり、当然「やります」と目で返答しましたが、心拍数はおそらく130程度だったかと思います。震える手で無事縫合を終えました。ライブサージャリーで震えずにオペできるってすごいことですね。皮膚縫合しかしてないのにラグビーW杯並みの緊張感でした。応援?ありがとうございました。 最近あんまり会っていない姉が偶然にも配信を見てくれて「映ってたね。痩せたね。」と言われ、「自分は痩せたのか…」ととてもホクホクとした気分になり、鹿嶋先生とのお寿司をペロリと平らげてしまいました。ご馳走様でした!良い気分で食べればゼロカロリー!!なんてことはなく今日は晩御飯抜きです。 小児のゴアテックス吊り上げを執刀 今日はお題の通りです。小児のゴアテックス吊り上げを執刀させていただきました。 眼形成手術あるあるですが、施設によってまったく指導内容が違います。水晶体再建術なら「しっかり手術の教科書読んでこい!」「はーーーい!!」で済む話ですが、特に吊り上げとなると資料が少ないです。教科書なんて本当に少ししかないです。 「吊り上げ」について教えていただいたこと 今日教えていただいたことをまとめたいと思います。 デザインについて まずデザインについてです。 挙筋機能が乏しいため術中に開瞼してもらい定量するのが困難です。必ず術前に眉毛直上〜瞼縁距離を測定します。 術後pretarsal showが広くなる傾向になるため、切開線は瞼縁から5mmではなく4mm程度にするのがよいと教わりました。 トンネル作成について 次にトンネル作成についてです。 眉毛上の切開から瞼縁切開創までトンネルを作成します。 まずはlayerに注意です。 眼窩隔膜下に深く入り込んでしまうとゴアテックスの緊張によりトンネル部位が盛り上がります。以前眼形成の症例検討会ラインにも写真が上がっていたと思われますが、不自然に盛り上がった嫌なまぶたになります。 じゃ浅くトンネルを作ればいいんだな!!というとそういうわけではなく、眼輪筋にあまりにも近いlayerでトンネル作成すると凹みの原因となります。眼窩隔膜内に入らないギリギリのところでトンネル作成する必要があります。手先の感覚は少しずつ習得しなければなりません。 もう一つはトンネルの広さに注意です。 瞼板に固定するゴアテックスは二股に分かれております。瞼縁側に寄るほど広く股が分かれます。そのため水平方向に広くトンネルを作成しなければ開瞼抵抗になります。広く剥離を行いましょう。 ゴアテックスの瞼板への固定について 次にゴアテックスの瞼板への固定についてです。 当院は4箇所固定しておりますが、ゴアテックスを牽引し瞼縁のアーチの形を必ず確認しましょう(自分はアーチの形が悪くやり直しをいただきました。ごっつぁんです。)。ここで注意なのが瞼板の上縁に固定することです。瞼縁に近いところで固定すると、上眼瞼外反の原因になりますのでご注意を。 次に重瞼作成を行います。 ゴアテックスの上端の固定前に必ず重瞼作成を行います。上端を固定してしまうと創の展開が困難になります。吊り上げ後は睫毛が降りて来て内反の原因になりますので必ずしっかり睫毛を立たせましょう。先天下垂の場合だとaponeurosisが萎縮していることもあり穿通枝の再建が困難なことが多々あります。瞼板もしくは瞼板前組織に固定するとより睫毛がたつかもしれません。 長くなりましたがもう少しです! ゴアテックスの上端の固定を行います。 皮下に固定を行いますが、必ず眉毛上の切開創の頭側の皮下に固定を行います。尾側に固定するとゴアテックスによる牽引のベクトルが創離開の方向に働き、肉芽形成します。かつ術前の瞼縁〜眉毛上距離よりやや短く固定します。皮膚が伸びることと術中の臥位の影響により、固定時の長さより瞼縁〜眉毛上距離が伸びることに留意が必要です。 眉毛上の皮膚はゴアテックスの牽引により離開方向にベクトルが働かないので特殊な事例以外は表皮縫合のみで十分なようです。 以上です!またいい経験ができました。みなさんに感謝です。 3度の飯より眼形成。 今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.03.30

睫毛内反と乱生の合併について

内反と乱生について さて同じ逆さまつげでも睫毛内反、乱生、重生、眼瞼内反など色々ありますが、今回は内反と乱生についてお話したいと思います。 内反の病態は腱膜の皮膚穿通枝の脆弱・欠損が原因と言われています。 乱生の病態は眼瞼炎などが原因となり、瞼縁に微小な瘢痕生収縮が起こり同部が眼球側に引っ張り込まれ(marginal entropion)、慢性炎症を惹起することが原因と言われています。 オキュロフェイシャルクリニック東京では、上眼瞼睫毛内反については、眼輪筋とaponeurosisを固定するHotz法を行っております。 下眼瞼睫毛内反については、Lid margin splittingとHotz法を併用しております。 まだまだ手技としては未熟でスピードも遅いですが、だんだん術後の睫毛位置や重瞼が安定してきたように思います。 しかし、内反に加えて乱生・重生まで加わると手術の難易度が一気に上がります。 今回は上眼瞼内反に加え、乱生のある症例について執刀させていただきましたので紹介します。 鹿嶋先生の手をかりなんとか執刀できました。 概ねやることは上眼瞼のHotzなのですが、乱生睫毛が嫌がらせのように眼球側を向いているため改善が乏しければもう一手間加える必要があります。教科書的には毛根除去術やlid splitting without lash resection(前葉移動術)、lid splitting with lash resection(Wojno法)があるようです。 今回の症例はgray lineを超えて結膜側にまで侵入した乱生を認め、Hotz+Lid margin splittingを施行しました。 教えていただいたポイント 教えていただいたポイントが3個あります。 Hotz時に普段より強く睫毛をたたせなければならない。より高位のaponeurosisに固定し、確実に重瞼を作る。 内側が再発好発部位のため、睫毛上5mmラインを内側までしっかり切開する。(※内側は切開線が睫毛側より5mmを超えがち!) splittingにより睫毛根を必ず前葉側に残し、前葉と後葉の連続を解除し、より強く睫毛を外反させる。 今回は上記を気にして執刀させていただきました。 経過は今後のお楽しみですが、経過が悪いようであれば睫毛を前葉ごと切除してしまうWojno法が選択されるのかと思います。 睫毛ハゲになってしまい、整容的には不利になりますが最も根治生が高いと言われております。 今後も睫毛と戦い続けます!今日もありがとうございました。 関連記事

2021.03.27

専門を決めること

今日もよろしくお願いします。 ものすごく今更ですが「医龍」という漫画を読破しました。天才外科医が神がかった手術でたくさんの患者を救うといういかにもありふれた話ですが、これまた非常に面白いです。教授をトップとした旧態依然な医局制度に正面から対抗する新進気鋭のバチスタチームの構図は血湧き肉躍ります。特に研修医伊集院の成長ぶりは本当にめざましいもので自分も努力し続けなければいけないとメラメラ燃えてきました。眼科医になって一度も後悔したことはありませんが、「心臓外科医かっけぇ…俺もなる!!」と思わせるような漫画です。ぜひ一読を。 専門がない一般眼科医というのはかなり厳しい戦いになる さて今回は学んだことというよりは考えたことを書きたいと思います。 自分はまだ眼科専門医前の後期研修医の身分ですので、白内障、硝子体、緑内障、眼形成など幅広い手術を経験させていただいております。最初眼科医になってからつい半年くらい前まではなんでもできる医者がかっこいいと思ってました。しかし、今は考えがかなり変わりました。都心部の人気な医局だと毎年10人近く入局者がいるようです。既に都心部の眼科医が飽和状態の中、専門がない一般眼科医というのはかなり厳しい戦いになると思います。実際僕の医局でも専門がしっかりある先生はそれなりの地位を築いていますが、専門がない先生は学年が上でも幅広い患者を診なければなりません。 「うちは専門がしっかりある。その分野の患者に特化してきっちり治します。」 という病院の方が提供できる医療レベルも上がり、患者サイドもその病院のコンセプトがわかります。 自分が罹患した病気の専門性が高いほど、治してくれる医者を探すのはめちゃくちゃ大変です。〇〇大学の□□先生が名医らしいと口コミレベルで聞いて、藁にもすがる思いで3時間も4時間も待つ患者はたくさんいます。しかし、実際会ってみると提供できる医療レベルが満足に足るものでなかった…と徒労に終わることも少なからずあると思います。 そういう患者の方々のために、大学よりも受診するハードルが低く、かつ大学よりも専門性が高いことができるクリニックができたら眼科医の生存競争の中では相当抜きん出ることができると思います。「なんでもできるけどなんにも専門はない」よりは「これしかできないけどこれだけは任せてくれ!」というジョブ型雇用式の方が今後生き残る可能性は極めて高いです。 自分も一刻も早くそうなりたいので専門医になる前から眼形成の専門性を高め、牙を研いでおります。 「何言ってんだこいつ」と思いながらでもいいので少しでも応援していただけたら幸いです。 話は変わりますが、この前涙道通水をさせていただいた患者様から「痛かった!」とクレームが入りました。涙小管構造を考えて通水針を挿入しないと当然ですが痛いです。涙道チューブ挿入時は上下涙点部皮下麻酔+滑車下神経ブロック+鼻涙管周囲の麻酔をしなさいと教わりました。今回のことを機に涙道解剖について勉強してみましたが、下記の文献はものすごく勉強になりました。機会があれば読んでみてください。その次に「医龍」もお願いします。 柿﨑裕彦:涙道の解剖 敵を知り己を知れば百戦危うからず!臨眼 70(10):1542‒1547, 2016 関連記事

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