BLOG医院ブログ

2021.12.22

先天性鼻涙管閉塞について part 2

今日もよろしくお願いします。   最近鮨にハマっております。 今の給料だとなかなか銀座の鮨は厳しいですが、新富町から築地へと隅田川へ近づけば近づくほどコスパの良い鮨屋が多い気がします。先日築地のお鮨屋さんに行ってまいりました。 銀座からは少し遠いですが、リーズナブルなお値段で熟成鮨が食べられます。googleの評価は本当に信用できます。 個人的にはオススメです。築地まで足を運ぶことがあれば是非。 目指せ銀座鮨です。       本日はまた先天性鼻涙管閉塞(Congenital Nasolacrimal duct obstruction、以下CNLDO)についてです。 前回はCNLDOの病態、治療について説明しましたが、今回は自然寛解や治療介入のタイミングについてまとめたいと思います。   下記論文から引用です。 Sathiamoorthi, S, et al; Spontaneous Resolution and Timing of Intervention in Congenital Nasolacrimal Duct Obstruction: JAMA Ophthalmol. 2018 Nov 1;136(11):1281-1286.   1998人の乳児をretrospectiveにレビューした大規模コホート研究です。   上記の図は全体で自然寛解しなかった割合を調べたグラフです。 これをみると月齢9ヶ月くらいまでは急速に自然寛解していきますが、その後から自然寛解の割合が少しずつプラトーになっていくのがわかると思います。   上記の図は特定の年齢以降に自然寛解が得られた数を調べたグラフです。 やはり9歳までは右肩下がりですが、それ以降は最終的には自然寛解していないことがわかると思います。   またプロービングの成績ですが、15ヶ月以上でプロービングした場合とそれ以前でプロービングした場合だと成功率に差があるのがわかると思います。   以上から外科的介入は9ヶ月〜15ヶ月の間に行うことが適切でしょう。   というのがこの論文の結論です。   ちなみに性差ですが、男児の方が早期の自然寛解が得られる傾向のようです。 これは男性の方が女性よりも骨性鼻涙管が0.35mm太いことが理由として挙げられています。   両眼性よりも片眼性の方が自然寛解時期が早くなる傾向にあります。     こういう知識をみなさまの診療の足しにしていだければと思います。       話は変わりますが、先日下眼瞼後退に対してLER延長+lateral tarsal stripを経験いたしました。 下眼瞼睫毛下皮膚を切開し、瞼板下縁にアプローチしLERを切離します。 その後結膜に穴を開けないようにLERと結膜を剥離していきます。 手技としては結膜とMullerの剥離と似ていますが、LERの方が脆い組織であるためスプリング剪刀でこそぐように剥離します。 LERは脆い組織であるため、牽引をしっかりかけることが大事です。 牽引のポイントは2つあります。 1.皮膚切開を左右に広く行うこと 2.牽引糸をgray lineにかけること です。 Lockwood ligamentを乗り越えて強膜が透けて見えるところまで前後左右に広く剥離します。 その後ベリプラストを用いて固定します。 医原性裏ハムラ後下眼瞼後退修正 手術動画 ※閲覧注意 手術動画です 医原性裏ハムラ後下眼瞼後退修正 Corrective surgery for iatrogenic lower eyelid retraction 当チャンネルでは若手医師の教育のために手術動画をアップしています。手術動画が苦手な方は見ないようにしてください。 鹿嶋先生の動画を載せておきます。勉強になりますのでご覧ください。 今日は以上です。今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.12.16

先天性鼻涙管閉塞について

今日もよろしくお願いします。   年末も近くなってきました。ユニクロのダウンの素晴らしさを改めて実感する日々です。   先日鹿嶋先生に勧められたキングコング西野さんの動画をみてみました。 今まで働いてきてなんとなく喉の奥にひっかかっていた違和感を論理的に分析してくれました。 premiumとluxuryの違いがポイントです。 自分なりの医療への応用について考えたことです。 医療は老若男女問わず公平に提供することが保険診療の決まりとなっています。 しかし誰だって 「優しい医者に診て欲しい。」「腕のいい医者に診て欲しい。」 と普通より良いサービスを要求します。 これは当然の心情ですが、今の日本の医療だと 「どこの医者に診てもらっても同等の医療を提供できるはずです。」 と言わんばかりに医療レベルの優劣が見えないようになっています。 自分のなった病気に精通し、かつ腕のいい医者を見つけるのは本当に大変です。 話は逸れますが、今良い医療脱毛サロンを探しています。良いところ探すのってすっごい大変です。 自分の体のことなので多少高いお金を払って良いサロンで脱毛をしようと思っています。 この「高いお金を払ってでも良いサービスを受けたい」 というニーズって素晴らしい医療においては埋もれてしまっていることが多いです。 USJでも入場パスに加えて、待ち時間が嫌だから1-2万円のエクスプレスパスを買ってる方はいらっしゃると思います。 そういう上級サービスにあたるものが医療にはないです。 西野さんの言葉を借りるとpremiumにあたる医療です。 オキュロは少なくともpremium以上にあたる医療は提供できていると確信しています。 自分はまずpremiumな医療を提供できるように努力します。 (今の所luxuryにあたる医療がなんなのかが自分にはわからないです…。今後追求していきます。) そのためには医療の腕・知識を高めるのは当然ですが、医師としての教養や為人を高めることも必要だなと今更ながら思うようになってきました。勉強しながら素晴らしい書物やサービス・演芸に触れていきたいと思います。 目指せpremiumです! 前置きが長くなりました。 本日は先天性鼻涙管閉塞congenital nasolacrimal duct obstruction, 以下CNLDOについてです。 ニッチな涙道分野のさらにニッチな分野です。 小児における最も一般的な流涙原因と言われています。 広義のCNLDOは下記に示す通りです。 松村ら;臨眼67巻5号 先日3歳のCNLDOに対する全身麻酔下の涙道内視鏡手術を経験させていただきました。 まずは診断方法についてですが、まず思い浮かべるのは通水試験だと思います。 一番メジャーな方法ではありますが、鎮静をかけない限り涙小管損傷の危険性がある侵襲的な検査と言えます。 総合病院、大学病院だと鎮静をできると思いますが、実際小児科や麻酔科に依頼する手間があります。 ましてや開業医でそれを行うのはかなりハードルが高いと思います。 そこで登場するのが非侵襲的かつ簡便的な検査であるfluorescein disappearance test, 以下FDTです。 松村先生の報告によると感度は95.2%、偽陽性は30.0%と言われています。 つまりスクリーニングにはなるけれども確定診断向きではないということです。 狭義のCNLDOは「鼻涙管下端の膜性閉鎖または開口不全と診断または推定されるもの。加圧通水またはプロービング(ブジー)で治癒した症例」と定義されます。 その閉塞の仕方や初見について上記の松村先生の報告でまとめられておりとても示唆に富みます。 実際のチューブや挿入後の初見についてもまとめられており非常にわかりやすい論文だと思いました。 しかも46人、合計56眼において6ヶ月時点での成功率が100%というのは素晴らしい結果だと思います。 今回自分の経験した症例でも還流を加えることでslit状に膜状閉塞している部位を見つけ穿破できました。 小児の症例でもあり、数が限られます。なかなか経験できない症例を執刀できたのは有難いことです。 マイナーな眼科の中のさらにマイナーな眼形成眼窩外科という分野ですが、思ったより知らないことが多すぎて辟易します。 でも楽しいのでやめないです。今日もありがとうございました! 関連記事

2021.12.05

義眼台包埋術について

今日もよろしくお願いします。   最近世界史近代にハマっております。 youtubeの家庭教師のトライのチャンネルで大学受験用の全科目の動画を見れます。非常に太っ腹です。 世界史近代を勉強すると、   現代であの国とあの国はなぜ仲が悪いんだろう? 社会主義と資本主義ってなんだっけ? ファシズムとかヒトラーって実際どういうこと? 原爆投下はひどいことだけどなんでアメリカはそんな決断をしたのか?日本人とアメリカ人の原爆への捉え方の違い。   などいろんなことがわかります。 真実は小説より奇なり と言いますが、事実である分下手な小説よりもずっと面白いです。   ウィキペディアの記事なんかもはや本です。無料でこんなのが見れるなんてネット社会は贅沢です。 本日は義眼台包埋術についてです。 昨日眼球癆に対して内容除去+義眼台包埋を行いました。 患者様の主訴は眼球陥凹です。 眼球陥凹なんてcosmeticな問題でしょ?治す必要なんてあるの?って思っている眼科医が90%以上だと思います。 絶対治した方が良いです。 Anophthalmic Socket Syndromeという概念があります。 義眼装用後の見た目の醜さ、何らかの機能障害により心理的要因が悪化する状態をいいます。 Francesco et al; Anophthalmic Socket Syndrome: Prevalence, Impact and Management Strategies. Clin Ophthalmol. 2021 Aug 6 例えばこの写真をみてください。 上の写真が修正手術前、下の写真が修正術後です。 上の写真が変な顔に見えるのは ①眼窩インプラントが小さいため、健眼に比べて陥凹している ②上眼瞼溝が目立つ ③視線がおかしい(おそらく義眼台の位置不良) ④下眼瞼下垂がある(おそらく義眼が大きいため) などの原因が挙げられます。 上の写真の状態でも死ぬわけでもないですが、心理的ストレスはかなりあると思われます。 義眼台包埋時に一番大事なことはとにかく大きな義眼台を入れることです。 義眼台はできるたけ大きく、義眼はできるだけ薄くすることで自然な外観が得られます。 義眼台の半径rのたった1mmの違いでも、体積に換算すると4/3π×(rの3乗)と大きな違いがあります。 義眼台はできるだけ18-20mmのものを入れましょう。 そんな大きな物が眼窩入るわけないだろう!と思う方もいらっしゃるかと思います。 入れる時のコツは ①強膜に子午線方向の全周切開を加えること ②視神経を切断すること です。 上記の操作を行わないと義眼台を入れるスペースができないのでパツパツになり、大きな義眼台を入れられなくなります。 スペースを大きく作り思いっきり義眼台を入れるとボコン!と入りますので、びびらずに大きな義眼台を入れてください。   また、眼窩の外下方に偏位しやすいため、内上方に義眼台を入れるイメージの方が筋円錐内に入りやすいです。     注意点もあげます。 一つは言わずもがな交感性眼炎です。強膜に付着したぶどう膜をガーゼでこそぐように残さず除去しましょう。 綿棒でもいいのですが、ガーゼの方がこそぎやすいと思います。 エタノールで強膜を洗いぶどう膜を処理するというのも一つの手です。   2つ目は義眼台の位置不良です。前述した通り義眼台は外下方(筋円錐外)に偏位しやすいため注意が必要です。   3つ目は義眼台の露出、感染です。 義眼台は人工物ですので、感染すると抜去が必要となります。挿入時は抗生剤や消毒剤の散布を行いましょう。 露出するとreopeになってしまいますので強膜、結膜でしっかり被覆しましょう。 ちなみに余談ですがテノンと結膜を一塊にして縫合した群とテノンと結膜をそれぞれ縫合した群の間で義眼台の脱出・露出に有意差はなかったようです。     今日はここまでにします!今日もありがとうございました! 関連記事

2021.11.24

退行性下眼瞼外反について

今日もよろしくお願いします。   浜松で行われた眼窩疾患シンポジウムにて発表してきました。 初のマイナー学会での発表ということでその道のプロの先生方が多数いらっしゃっており冷や汗をかきましたが無事終了できました。ご指導いただいた先生やスタッフの皆様本当にありがとうございました。     初めて浜松に行きました。 海、山、湖の3つが近くにありそれらの幸が全て頂けるという垂涎のスポットでありました。   こちらの店に行かさせていただきました。   浜松料理 じねん  地浜松の『旬』ならここ。 浜松料理じねん 毎日地元の漁れたてが ここ”じねん”にすべて集まります。 おいしい旬肴とおいしい地酒や 焼酎のてんこもり。 人気のカウンター席から30名様までの 宴会が可能なお座敷もございます。       お知らせ お知らせ一覧www.jinen-g.jp     こちらのお店は全て浜松産の食材を使用しておりとんでもない地元愛を感じます。 特に感動したのは浜名湖産のうなぎとどうまん蟹です。   うなぎはフワフワに炊き上げるのが普通かと思いますが、こちらのうなぎはカリッカリに焼き上げております。 しかも薬味にはにんにくが使用されており、こーーれは素晴らしい。たまらんです。   もう一つどうまん蟹です。僕は名前さえ知りませんでした。築地にさえほとんど出回らず、幻のカニと言われているそうです。 これもまた素晴らしい。かに味噌の風味がとても強く、また舌触りがとてもよいです。 かに味噌ってちょっとしかないイメージですが、どうまん蟹には大量の味噌が入ってます。 日本酒がスッスと無くなります。あのカニは酒どろぼうです。   浜松食べ尽くしの学会でした。鹿嶋先生ごちそうさまでした。感謝感謝です。       本日は眼瞼外板 Ectropionについてです。下眼瞼はかなり奥深い分野です。 Ectropionはinvolutional, paralytic, mechanicalやcicatricialなどの原因がありますが、全て語ってしまうと今日の僕の睡眠時間は限りなく0になります。今回はinvolutionalとparalytic ectropionの治療法について語りたいと思います。 (個人的にinvolutionalとpalalyticとcicatricialの意味はわかるのですが、mechanicalの意味がわかりませんでした。調べてみると腫瘤、浮腫や嚢胞によって下眼瞼が眼球から離れる方向に引き離されることによって起こる外反を意味するようです。) Ophthalmology fifth edition より出典   Involutional EctropionはそもそもLERの弛緩(垂直方向)とOOM、LCT、MCT(水平方向)の弛緩が原因です。   それに対して行う術式で一番有名なものはおそらくLateral Tarsal Strip Procedure(以下LTS)と思われます。 水平方向の短縮に極めて有利な術式です。   それを語るにあたってcanthopexyとcanthoplastyの違いを覚えておくと良いかと思います。 canthopexyは「糸で眼角を固定すること」 canthoplastyは「眼角を形成すること」 です。   canthopexyはlateral orbital rimの前面に重瞼線の延長線上の皮膚切開を加え、orbital rimと外眼角を埋没によって短縮させ弛緩したLCTの短縮を図ります。程度の弱い水平方向の弛緩に有用で、眼角に切開を加えないため整容的に優れます。   canthoplastyは弛緩した前葉+後葉を切除しtarsusとthe lateral orbital rimを縫着するため強い矯正効果がありますが、眼角を切開するため整容的に劣ります。       当院ではinvolutionalとparalyticのectropionについてLTSとmediar tarsorrhaphyを行なっております。 下眼瞼のlateralとmedialのdistraction testを行い、下眼瞼の弛緩が外側なのか内側なのか、もしくは両方なのかを判断します。 外側の弛緩がメインであれば、LTS 内側の弛緩(下涙点の外反、上下涙点間距離の拡大など)の場合はmediar tarsorrhaphyを行います。 Ophthalmology fifth edition より出典   LTSの切除量に関してさらっと調べた感じでは一定したconsensusはないと思われますが、弛緩の程度に応じて5-8mm程度の切除を行います。切除過多には要注意です。 縫合時のコツはとにかく瞼縁を揃えることです。しっかり瞼縁を揃えないと外眼角がdullになってしまったり、創離開の原因となります。 このLTSの固定の仕方についてmodified LTSなるものが近年報告されてきているようです。 どれが一番成績が良いかは直接比較しないとわかりませんが、試してみたいものです。 Modified lateral tarsal strip for involutional entropion and ectropion surgery Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2017 Mar;255(3):619-625. The Use of a Double Suture and Conjunctival Cuts in the Lateral Tarsal Strip: A New Approach to Involutional Ectropion J Craniofac Surg. 2018 Nov;29(8):2312-2315.   mediar tarsorrhaphyは上下涙点より内側の結膜を皮膚粘膜移行部まで切除し、上下縫い合わせる術式です。 上図では念入りに縫合を行なっておりますが、現在当院ではここまでせずに皮膚縫合のみ行っております。 離開がほぼないような印象ですが、いずれstudyを行っても面白いかもしれません。     本日はここまでにしたいと思います。また長くなってしまいました。 オタク気質のため一度書き始めるとなかなかやめられないです。 しかし知識欲が満たされ、成長することはドパミン系の快感が得られます。 今日もありがとうございました。 関連記事

2021.10.28

涙道閉塞症と眼窩腫瘍について

今日もよろしくお願いします。   今週は臨床眼科学会ですね。自分は今回は学術展示での発表です。 ほんの数分の発表ですので内容はpoorかもしれませんが、皆様みていただけたら幸いに存じます。 よろしくお願いします。       オキュロの同門医師の寒竹先生はウイスキーが大好きです。 自分はウイスキーに疎いですが、ウイスキーバーに連れて行ってもらい感動したウイスキーがあるので紹介します。   世界が熱望するアイラモルト ARDBEG世界が熱望するアイラモルト ARDBEGの公式サイトです。www.ardbegjapan.com     イギリスにアイラという島がありそこで作られているスモーキーで香り高いウイスキーです。 あまりにも香りが良すぎて飲むのを忘れてずーっと匂いを嗅ぎ続けていました。 口に含むと最初だけピリっとしますが、その後コーヒーのような燻製のような味わいが口いっぱいに広がります。 ストレートでもハイボールでも楽しめますので一度お試しください。 自身で購入してみたのですが、やはり家よりお店のグラスで飲むほうが美味しいですね。なぜでしょう。       さて本日は涙道閉塞症と眼窩腫瘍についてです。   最近眼瞼だけではなく、眼窩や涙道に触れさせていただく機会が少し増えて来ました。 そんな中でこれは怖いなーって思ったことについてお話します。   患者が流涙を主訴に来た場合、「なんだただの涙道閉塞かぁー。涙小管閉塞なら涙道内視鏡して、慢性涙嚢炎・鼻涙管閉塞ならDCRしよーっと」とだけ思っているといずれ痛い目を見ます。   涙囊炎というと典型的なのは下記のような写真です。 涙嚢炎 - 17. 眼疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版涙嚢炎-病因、病理生理学、症状、徴候、診断および予後についてはMSDマニュアル-プロフェッショナル版へ。www.msdmanuals.com より出典   でも典型的ってなんなのでしょうか?? 次に下の写真を見てください。 Stephen P. Verb, et al: Phakomatous choristoma: A rare orbital tumor presenting as an eyelid mass with obstruction of the nasolacrimal duct: J AAPOS. 2009 Feb;13(1):85-7.     場所をみると一見涙嚢が腫れているように見えなくもありません。 実際はPhakomatous choristomaという珍しい腫瘍による腫脹でした。 「これは珍しい小児の症例だし画像診断すればわかるじゃん!」   と思いますがこれが高齢で眼脂を伴った患者様だとどうでしょうか? 忙しい外来中にふっとそういう方が舞い込んでくると通水をして涙道opeにぱぱっと回してしまいたい気持ちもあります。 そんな気持ちをぐっとこらえて患者様の顔をよく見てみましょう。   例えば腫脹している部位は本当に涙囊か?、眼球位置の偏位はないか?、硬さはどうか?などです。   上記を加味しながら診察すると「なんか変だな」という思考が働きます。   この「なんか変だな」という思考ってものすごく大事で教科書には一切載っていないです。 いわゆる名医といわれる方々は圧倒的経験によって、「なんか変だな」というレパートリーを星の数ほど持っています。 自分も含めて経験の浅い医師はそのレパートリーが圧倒的に少ないので気付けずに診断・治療を行ってしまいます。   先ほどのPhakomatous choristomaの症例にDCRや涙道内視鏡を行うことはほぼ禁忌と言えます。 ちなみにこの辺にできる腫瘍としては、Hemangioma、Dermoid cyst、EncephalocereやRhabdomyosarcomaなどがあります。   眼窩腫瘍に限らずどんなに忙しくても「なんか変だな」思考を蔑ろにせず常に疑問を持ち続け、自分の予想に反していればそれを軌道修正しなければ間違った知識が蓄積されていきます。   師へ教えを乞い、さらに自学自習を重ねた者にのみ名医への道が開かれますので今後もチャレンジを続けていきたい思います! 今日は自己啓発本みたいな内容になってしまいました。今週も半ばが過ぎました!残りも攻めて頑張りましょう! ありがとうございました。 関連記事

2021.10.10

経涙丘アプローチについて

今日もお願いします!   先日木更津駅の近くの「すし処 つどい」というお寿司屋さんに行ってきました。 木更津駅周辺でとても評価が高かったので目につきました。 google mapの評価って大事ですね。 2020/9/16に開店して丁度オープン1周年です。 渋いイケメンな店主と美人な奥さんの二人で営業されております。 千葉県にはあまりないオシャレな雰囲気のお寿司屋さんです。 シャリに赤酢を使っていてものすごくこだわりを感じられます。それでいて酸っぱすぎず、シャリもやや硬めで僕の好みです。 食材もお酒も千葉県産ばかりで千葉県を食べ尽くすことができます。実際に店主さんが朝釣ってきたネタもあって面白いです! 一度行ってみてください!! さて本日は経涙丘アプローチについてです。 先日内壁骨折のアプローチを経験させて頂きました。当然ですが、下壁と全然違うアプローチで四苦八苦しました。 次いつチャンスがあるかわからないのでしっかり復習をしたいと思います。 眼窩に侵入するアプローチの一つとして経涙丘切開アプローチ(Transcaruncular approach)があります。 涙丘はCaruncle, 半月ひだはplica semilinarisといいます。 http://kellogg.umich.edu/theey より出典   ここにこのような切開を加えてmedial wallへ侵入していきます。   Caruncleは皮脂成分の混じった角質化されていない扁平上皮から成り、深部は無血管組織です。 よってアプローチ中に血が出たら違う場所に入っていると思ってください。 Caruncleの硬い組織を切ったらその真下を内壁に向かい真横に侵入していきます。   上図のように眼窩脂肪を常に外側に寄せて眼窩隔膜に沿って内壁を目指します。脳ベラを使用すると便利です。 こんなイメージでHorner's muscleの背面を剥離していくようなイメージです。 Horner's muscleとlacrimal sacは上記のように位置関係になっていますのでこれを目安に後涙嚢稜(posterior lacrimal crest)を 目指します。   図式すると下記の通りです。   後涙嚢稜のあたりで骨膜を切開して骨膜下に入ります。   それ以降は以前のブログで説明した通りです。 骨折の後端を露出して、そこにプレートを乗せることが極めて難しいです……。努力努力です。   下壁と違うところは内壁は薄くて脆いことです。実際触ってみて思いましたが、すぐに穴が空きそうなくらい脆いです。医原性骨折を作らないように気をつけましょう。   また内壁の再奥には視神経がありますので脳ベラなどを入れる時、何かの拍子で奥に突き刺してしまうと視神経損傷に繋がりますのでご注意を。 Transcaruncular approachはLynch's techniqueに比べると何より皮膚に瘢痕を作らないことが最大のメリットですが、術野が小さいため経験を要します。皮膚を切らないに越したことはないので頑張って習得したいと思います!! 日々新しい発見で楽しいですね。継続学習です。今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.10.03

涙腺について

今日もよろしくおねがいします!   皆様オイコスというヨーグルトをご存知でしょうか?   恥ずかしながら自分は下痢ピー人間ですのでヨーグルト、オリゴ糖、食物繊維は欠かせません。   このオイコスというヨーグルトは現代人に不足しているタンパク質を大量に含んでおります。 厚生労働省のホームページによるとタンパク質の摂取基準は下記の通りです。   タンパク質を摂取するとなると肉、魚介類をイメージすると思います。 しかし、いざそれらを摂取しようとすると大量の脂質・糖質が付随してきます。 オイコスはたった71 kcalで1日摂取量の1/5を摂取できます! 「タンパク質豊富なヨーグルトってどうせプロテインみたいなパサパサでモッタリした味がするんでしょ?」 って思いますがオイコスはまんまヨーグルトです! ぜひお買い求めを!!       さて本日は涙腺についてです。 皆様涙道についてはいくらかは見聞きしたことはあると思いますが、涙腺については医学部でもあんまり教えてくれないので「なんとなくーーー♩」で済んでいる方も少なからずいるでしょう。かく言う私もそうであります。 そんな方々のために語ります。   涙腺は下記のような解剖です。 Techniques in Ophthalmic Plastic Surgery Second Editionより出典     眼瞼挙筋のlateral hornを境にして眼窩部と眼瞼部に分かれます。   眼窩部は眼瞼挙筋の上方、orbitの外上方に位置し実際は眼瞼より外側にあります。 眼瞼部は眼瞼挙筋の下方、結膜の外上方に位置し円蓋部に向かって小管を出します。     神経支配は下記の通りです。 Sobotta Clinical Atlas of Human Anatomyより出典 これだけ見ると涙腺って三叉神経支配なんだぁって思うでしょうが、実は交感神経線維と顔面神経からの副交感神経線維も合流します。ちなみに顔面神経麻痺になると涙液分泌が抑制されます。さらに兎眼になることで閉瞼不全となり角膜上皮にとってはダブルショック状態となります。       下記のサイトでも副交感神経線維の走行について記載がありましたのでご覧になってください。 眼神経 V1 (ophtalmic nerve) | 徹底的解剖学眼神経 V1 (ophtalmic nerve)三叉神経の第1枝で、三叉神経節より前上方に向かい、上眼窩裂を通って眼窩に至る。眼窩内、上眼瞼、前頭部、鼻腔の一部、眉間、鼻根、鼻尖などに分布して、皮膚知覚を司る。www.anatomy.tokyo       上眼瞼を翻転すると涙腺眼瞼部が観察できます。 Techniques in Ophthalmic Plastic Surgery Second Editionより出典   右が正常です。 左はDacryopsという状態です。涙腺嚢胞もしくは涙管嚢胞と訳されます。トラコーマ、瘢痕性類天疱瘡、化学外傷、特発性などの原因があります。病態としては小管の閉塞が原因と言われています。また、嚢胞内腔へIgAが過剰分泌され、浸透圧により嚢胞が拡大するという説もあるようです。基本的には良性ですが、SCCに変化したという報告があります。基本的には経結膜切除ですが、類天疱瘡などにより結膜の損傷が激しい症例には皮膚切開からアプローチして切除することもあるようです。分泌能が強く穿刺だけでは再発することが多いです。     眼窩部の小管は眼瞼部を貫いて結膜に開口し涙液を排出します。眼瞼部を切除してしまうと小管と結膜の連続性が切断されてしまうためドライアイになります。眼窩部はある程度切除してもそこまでドライアイにはならないようです。   涙腺腫大といったら色々な病気を疑わないといけません。まだまだ不勉強ですが…。 下記にAdenoid cystic carcinoma、Benign mixed tumor、リンパ性疾患の鑑別方法について貼っておきます。 一緒に覚えましょう!   Techniques in Ophthalmic Plastic Surgery Second Editionより出典     他に眼窩の外上方の腫瘤として忘れてはいけないのは涙腺脱臼です。 今回眼瞼下垂の術前の患者様の瞼を触診したところたまたま涙腺部の腫瘤を見つけました。圧痛のない硬結で画像診断の結果上記診断となり、挙筋前転+涙腺亜全摘を経験させていただきました。 涙腺なんて全く馴染みのない臓器だったため、指導を受けながら手探りでなんとか完刀しました。   涙腺は血液から液体成分を濾して涙液を分泌する臓器のため出血が出ます。涙腺動脈は眼窩の中でかなりの血流量を有する血管です。眼科医からすると術中出血はゾッとしますが、逆に出血があると「あぁこれは涙腺なんだな」と思えます。どうしても涙腺がわからなかったら、外上方のrimを見つけてそこから眼窩内に沿って入っていくとそこに必ず涙腺があります。   先述の通りですが、涙腺の眼窩部は切除してもそこまでドライアイにはならないので眼窩部をメインで亜全摘します。 脱臼している部分を切除したらあとは周囲組織とrimの奥側の骨膜を縫合します。ヘルニア門を閉じるようなイメージですね。 「もう脱臼してくるなよ!」と思いながら気合いを入れて縫います。   神経走行をみてわかる通りですが麻酔時は涙腺の奥に効かせるイメージでやらないと結構痛いですのでご注意を! (以前のブログにも書きましたが、挙筋短縮併用の場合は必ず定量後に麻酔追加です!)         今回はボリューム多めでした。最後までありがとうございました。眼窩、涙道って本当に奥が深いです。ここまで多岐にわたるとは思ってませんでした。間違っているところもあるかもしれませんが、一緒に学んでいきましょう!今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.09.23

内眼角贅皮 epicanthus について

今日もよろしくお願いします。   臨床眼科学会の締め切りが近くなってきたためスライド作りに追われておりました!現在深夜1時20分です。 学生時代から試験前などに追い込みをかけるタイプなのでこんな時間になってしまいました。   今回自分は下眼瞼睫毛内反に対するLid margin splitting+Hotz変法の手術成績と再発要因の検討について学術展示にて発表させていただきます。今回の発表形式がスライドの音声録音の持ち時間3分ということでかなり薄い内容にはなってしまいました。コロナになってから学会参加が億劫になっている先生方が多いと思いますが、ご覧になっていただけたら幸いに存じます。       ちなみに最近はラーメンから浮気してしまい、蕎麦にハマっております。わさびと大根と蕎麦で酒が進みます。 蕎麦はヘルシーだと思い込みいつも食べ過ぎてしまい、結局太りかけます。       さて今回は下眼瞼睫毛内反について調べていると内眼角贅皮についても語りたくなってきましたのでご報告させていただきます。 内眼角贅皮はモンゴロイドに特徴的で皮膚と眼輪筋によって形成されます。 内眼角贅皮があると眼裂幅が小さく見えるため容姿に影響します。 容姿に影響するだけだとほっといてもいいじゃん!って思うのですが、下記の場合は内眥形成の追加を検討した方がよいと思います。 ①睫毛内反を合併した場合には眼瞼内側の睫毛が贅皮に当たり掻痒感を呈している。 ②上下内側の睫毛内反手術時に内眥がつっぱって抵抗として働くと考えられる。   症例写真を示します。   これくらいだといいんじゃないの?と思いますが、このような睫毛の長くて濃い患者は実は目頭の症状(掻痒感、眼脂など)を強く感じていることが多いです。このような睫毛を"barb-like" eyelashesと表現している論文もありました。   実際の方法ですが、デザインは下記のように行います。   この皮弁に対してZ-plastyを行うとこのようになります。 目頭に突っ張っていた皮膚がなくなって内眼角がしっかり見えているのがお分りいただけるかと思います。   このように内眥形成にて内眼角贅皮を矯正すると目頭の症状がすっきりし、整容的にも目が大きくなるのでかなりオススメです。     文献的考察も行ってみたいと思います。   まず、modified Hotz法単独とZ-epicanthoplasty併用の手術成績を比べた下記論文によると 1)Jianxin Ni, et al. Modified Hotz Procedure Combined With Modified Z-Epicanthoplasty Versus Modified Hotz Procedure Alone for Epiblepharon Repair. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. Mar/Apr 2017;33(2):120-123.   治療経過が"excellent"だった割合が単独群では78%、併用群では98.6%と併用群の方が結果が優れていました。     次に下記の論文もmodified Hotz単独とepicanthoplasty併用の手術成績を比べたものですが 2)Hitoshi Nemoto, et al. Reduction in Recurrence Rate by Combining Modified Hotz Procedure With Epicanthoplasty to Treat Congenital Epiblepharon. Ann Plast Surg. 2020 Jun;84(6):632-637.   併用群の方が再発率が低下したとのことです。上眼瞼と下眼瞼を切り離すことで下眼瞼鼻側の症状を改善できます。     また、下記論文は内側の下眼瞼epiblepharonについてmediar epicanthoplastyのみ施行したというなかなか攻めた内容です。 3)JeongJae Oh, et al. Medial lower lid epiblepharon repair solely by skin-redraping medial epicanthoplasty. Br J Ophthalmol. 2014 Oct;98(10):1437-41.   過度な余剰皮膚・筋肉のない内眼角贅皮を伴う下眼瞼内側epiblepharonは従来の方法(Hotz変法)を用いずともepicanthoplastyのみで良好な結果を示したとのことです。       色々な先生方の手術方針を見てみるとそれぞれの考え方があって面白いです。 適応や術式選択、手技について自分の最善を検討し続けていきたいと思います。 今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.09.17

裏ハムラについて 〜文献を元に〜

今日もよろしくお願いします!   先日亀田総合病院の患者様から伊勢海老とサザエを頂きました! 千葉県の南の房総地区では浜焼き屋さんがたくさんあります。 房総地区ではサザエ、トコブシ、アワビ、伊勢海老などたくさんの魚介類が漁獲されます。   患者様からたまに頂けるのですが本当に美味です。 可愛らしいおばあちゃまがくれる袋の中には、食べやすいようにボイル後に冷凍した伊勢海老が丁寧に包んで入ってあります。 そういう気遣いに僕の心がボイルされます。       さて本日はまたまたハムラについてです。 最近執刀させていただける機会が多いのでご報告します。   ポイントは前回と変わらず   ①orbicularis retaining ligamentをしっかり骨から外すこと。 ②ligamentが再度癒着しないようにorbital fatをspacerとして固定する。   なのですが、細かい点について紹介します。     いわゆるeyelid bagは何によって規定されているのか調べた論文によると 1)Goldberg RA, McCann JD, Fiaschetti D, Simon GJB. What causes eyelid bags? Analysis of 114 consecutive patients. Plast Reconstr Surg. 2005;115:1395–1402.   6つのカテゴリーがeyelid bagの解剖学的成因となっていることがわかりました。 1. tear trough 2. orbital fatの脱出 3. 皮膚弛緩 4. 眼瞼浮腫 5. 眼輪筋の突出 6. Malar mound, festoon   その中でも1, 2, 3が特に大事で、手術を推奨する判断基準となるとのことでした。 2と3が特に審美的に寄与率が高いということがわかりました。     また放射線科の奥田先生の発表も面白かったです。 2)Itsuko Okuda, et al. Using Multidetector Row Computed Tomography to Evaluate Baggy Eyelid. Aesthetic Plast Surg. 2012; 36(2): 290–294.   baggy eyelidをmulti-detector-row CTを用いた画像診断によって 1. 眼輪筋の厚さ 2. orbital fatの脱出の長さ 3. 年齢 の関係を明らかにするというものでした。   上記によると年齢に応じて眼輪筋の厚さは薄くなり、当然ながらorbital fatの脱出の程度は強くなっていきます。   また、眼輪筋の厚みが減少するとorbital fatの脱出の程度が強くなっていくという相関関係がわかりました。     これらのことを手術時に応用するとすれば   orbital fatを移動させるときはtear troughを意識して内側の処理をより念入りに行うこと よりflatな下眼瞼を目指すためにシート状に広く長くfatを固定すること   がポイントです。 内側のligamentを特に重点的に外し、そのligamentの直下に確実に脂肪をおいてくることが綺麗な下眼瞼につながると思います。   皮膚弛緩があるのであれば皮膚切除も行えば良いのではないかという意見もあると思うのですが、それは僕の中で結論が出ていないので今後考えていこうと思います。誰か答えを知っていたら教えてほしいです。       先日youtubeにて鹿嶋先生主導の元、オンライン勉強会をさせていただきました。 自分は「局所麻酔手術の患者さんの身体的負担を減らす方法」のセクションでの発表でした。 お見苦しい点があるかと思いますが、何かの肥やしになればと思います。ぜひご覧ください。 第1回 眼形成手術研究会 オンライン講演会 オキュロフェイシャルクリニック 鹿嶋友敬こんにちは。眼形成手術に特化した眼科であるオキュロフェイシャルクリニック東京の院長・鹿嶋友敬です。Facebookという媒体を使って、眼形成手術研究会という医局の症例検討会のようなものを3年前から運営してきました。そこでは日々の診療で出会ったさまざまな眼形成という専門領域で治せる疾患を紹介し、治療方法を紹介してき...www.youtube.com     今年は残暑もなく急に冷え込んでまいりました。みなさま体調管理にお気をつけてお過ごしください! 今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.08.31

裏ハムラについて

今日もよろしくお願いします。   今日のテーマは「梨」です。 千葉県って気候条件、土壌条件が梨の栽培に適しております。 千葉県では8-9月に梨の旬が来ますが、ちょうど蒸し暑い時期に旬が重なるためとてもおいしく感じます。   実は千葉県の梨栽培は江戸時代が最初と言われております。現在の市川市の八幡地区がルーツらしいです。 この地区の梨は江戸へ運ばれて高級品として扱われていたとのことです。 特に徳川末期では関東最大の梨産地として栄えていました。   現在でも梨栽培が盛んで一番有名なのが「幸水」「豊水」と言われる品種です。 この時期になると色々な方から梨を頂けます。ありがたい限りです。 頬張ると口から溢れ出すほどの果汁に驚かされます。 その果汁も芳醇であり、シャクシャクした果肉の感触が香りをさらに際立たせます。   機会があれば一度お買い求めください。         下眼瞼脂肪ヘルニアについて先週は病態の話をしました。 今回は実際の治療法である裏ハムラ法について説明したいと思います。   ポイントは2つです。 ①orbicularis retaining ligamentをしっかり骨から外すこと。 ②ligamentが再度癒着しないようにorbital fatをspacerとして固定する。   この2つに尽きます。 図解すると下記の通りです。 オキュロフェイシャルクリニック東京HP より抜粋     まず麻酔が大事な手術です。 V2の支配領域を非常に広くいじりますので頰部の骨から皮下にかけてを広い範囲で麻酔しないといけません。 特に鼻の横側が特に痛いところですのでそこまでしっかり麻酔をかけます。   下眼瞼結膜・LERを切開し、orbita内に入ります。 そこから下方rimに到達しますが、下壁骨折の結膜アプローチと違い眼窩隔膜を開けてアプローチするため比較的容易に下方rimに到達できます。下方rimから上顎骨・頰骨の前面にアプローチする時に眼窩内から静脈が出ていることがあるので事前に焼灼しておくと便利です。   ここで①のポイントです。orbicularis retaining ligamentをサイドに広く確実に外すことです。 当院ではエレバラスパを使用しています。 この靭帯がフリーにならないと必ず再発します。   次にorbital fatの操作に入ります。 下眼瞼のorbital fatは内側・中央・外側の3つのfat padに分かれます。 内側と中央は下斜筋、中央と外側はarcuate expansionと呼ばれる弓状線維で分けられます。 上記の図におけるnasal fat padとcentral fat padを利用します。 下斜筋を同定し、nasal fat padとcentral fat padを分離します。 orbital fatには被膜があり、それとfat自体を分離しないとfatがfreeにならないので「服を脱がすように」剥離します。   その次にfatを固定するのですが、この時に②のポイントが大事になります。 二つのfat padを放射状に配置してligamentが再度癒着しないようにspacerとして置いてくることです。 この操作が甘いと治りません。(先日術後再発の症例を経験して学びました…涙)   fatに牽引糸をつけてligamentの位置を乗り越えてできるだけ下方にfatを固定するように心がけましょう。 固定後はベリプラストを散布しfatを固定します。   仕上がりの目安はもともとヘルニアだった部位がむしろ凹み、骨前面が膨らむようになればばっちりです。👍   固定後もそれで終わりではありません。 下眼瞼結膜の位置を修正しないと、後葉の癒着短縮が起こり術後entropionの原因となりますのでご注意を! (僕もやりました…涙)     今日は以上です。綺麗な下瞼を目指しましょう!   雨ニモマケズ 風ニモマケズ コロナニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ   頑張っていきましょう! 関連記事

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